プログラムの目的と特徴
目 的歯科医師として必要な診療に関する基本的知識、技能および態度の習得のみ ならず、患者とその家族との間に適切な人間関係を確立し、また他の職員との 間に信頼関係を築き、患者の立場に立ったプライマリ・ケアが十分できうる臨 床歯科医師を養成する。
特 徴- 研修はオリエンテーション後、指導医に従い歯科口腔外科臨床の見学、介 助、治療の一部を行うことから始まり、臨床検査、中央放射線部の医療機器 の基礎的知識など臨床歯科医師に求められる基本的な診療に必要な知識、技 能、態度を習得することができる。
- 歯科口腔外科における基礎的知識、技術の習得はもとより、関連する他科 での研修により、口腔の疾患、診断、治療と全身の係わりを総合的に理解で きるようになる。
- 本院併設の救命救急センターでは、臨床歯科医師としての全身の知識、麻 酔、顎顔面外傷などの救急疾患の診断や基本的応急処置および手術の習得が 可能である。
- 本院入院中の患者の歯科口腔外科的処置を習得することにより、有病者の 歯科治療における基本的対応が習得できる。
- 研修方式は臨床研修施設群方式で期間は12ヶ月である。希望により引 き続き 12 ヶ月間の麻酔科研修も可能。
プログラムの到達目標
患者中心の全人的医療を理解し、すべての歯科医師に求められる基本的な診療能力 (態度、技能、知識)を身に付け、生涯研修の第一歩とする。
- 歯科医師臨床研修 【基本習熟コース】
- 歯科医師臨床研修 【基本習得コース】
独立診療が実施できるようになるため、基本的な歯科診療に必要な臨床能力を身につける。
1. 医療面接
一般目標患者中心の歯科診療を実施するために、医療面接についての知識、態度、技能を身に付け実践する。
行動目標- コミュニケーション・スキルを実践する。
- 病歴(主訴、現病歴、既往歴、家族歴)聴取を的確に行う。
- 病歴を正確に記録する。
- 患者の心理・社会的背景に配慮する。
- 患者・家族に必要な情報を充分に提供する。
- 患者の自己決定を尊重する。(インフォームドコンセントの構築)
- 患者のプライバシーを守る。
- 患者の心身における QOL(Quality Of Life)に配慮する。
- 患者教育と治療への動機付けを行う。
2. 総合診療計画
一般目標効果的で効率の良い歯科診療を行うために、総合治療計画の立案に必要な能力を身に付ける。
行動目標- 適切で充分な医療情報を収集する。
- 基本的な診査(基本的な検査を含む)を実践する。
- 基本的な診査の所見を判断する。
- 得られた情報から診断する。
- 適切と思われる治療法及び別の選択肢を提示する。
- 十分な説明による患者の自己決定を確認する。
- 一口腔単位の治療計画を作成する。
3. 予防・治療基本技術
一般目標歯科疾患と機能障害を予防・治療・管理するために、必要な基本的技術を身に付ける。
行動目標- 基本的な予防法の手技を実施する。
- 基本的な治療法の手技を実施する。
- 医療記録を適切に作成する。
- 医療記録を適切に管理する。
4. 応急処置
一般目標一般的な歯科疾患に対処するために、応急処置を要する症例に対して、必要な臨床能力を身に付ける。
行動目標- 疼痛に対する基本的な治療を実践する。
- 歯、口腔及び顎顔面の外傷に対する基本的な治療を実践する。
- 修復物、補綴装置等の脱離と破損及び不適合に対する適切な処置を実践する。
5. 高頻度治療
一般目標一般的な歯科疾患に対処するために、高頻度に遭遇する症例に対して、必要な臨床能力を身に付ける。
行動目標- 齲蝕の基本的な治療を実践する。
- 歯髄疾患の基本的な治療を実践する。
- 歯周疾患の基本的な治療を実践する。
- 抜歯の基本的な処置を実践する。
- 咬合・咀嚼障害の基本的な治療を実践する。
6. 医療管理・地域医療
一般目標歯科医師の社会的役割を果たすため、必要となる医療管理・地域医療に関する能力を身に付ける。
行動目標- 保険診療を実践する。
- チーム医療を実践する。
- 地域医療に参画する。
生涯にわたる研修を行うために、より広範囲の歯科医療について知識、態度、技能を修得する態度を養う。
1. 救急処置
一般目標歯科診療を安全に行うために、必要な救急処置に関する知識、態度、技能を修得する。
行動目標- バイタルサインを観察し、異常を評価する。
- 服用薬剤の歯科診療に関連する副作用を説明する。
- 全身疾患の歯科診療上のリスクを説明する。
- 歯科診療時の全身的合併症への対処法を説明する。
- 一次救命処置を実践する。
- 二次救命処置の対処法を説明する。
2. 医療安全・感染予防
一般目標円滑な歯科診療を実施するために、必要な医療安全・感染予防に関する知識、態度、技能を修得する。
行動目標- 医療安全対策を説明する。
- 医療事故及びヒヤリ・ハットを説明する。
- 医療過誤について説明する。
- 院内感染対策(Standard Precaution を含む。)を説明する。
- 院内感染対策を実践する。
3. 経過評価管理
一般目標自ら行った治療を観察評価するために、診断及び治療に対するフィードバックに必要な知識、態度、技能を修得する。
行動目標- リコールシステムの重要性を説明する。
- 治療の結果を評価する。
- 予後を推測する。
4. 予防・治療技術
一般目標生涯研修のために必要な専門的知識や高度先進技術を理解する。
行動目標- 専門的な分野の情報を収集する。
- 専門的な分野を体験する。
- POS(Problem Oriented System)に基づいた医療を説明する。
- EBM(Evidence Based Medicine)に基づいた医療を説明する。
5. 医療管理
一般目標適切な歯科診療を行うために、必要となるより広範囲な歯科医師の社会的役割を理解する。
行動目標- 歯科医療機関の経営管理を説明する。
- 常に、必要に応じて医療情報の収集を行う。
- 適切な放射線管理を実践する。
- 医療廃棄物を適切に処理する。
6. 地域医療
一般目標歯科診療を適切に行うために、地域医療について知識、態度、技能を修得する。
行動目標- 地域保健活動を説明する。
- 歯科訪問診療を説明する。
- 歯科訪問診療を体験する。
- 医療連携を説明する。
A. 経験すべき診察法・検査・手技
①基本的な診察法を経験し、記載できる(顔面・頚部・口腔、歯肉・歯牙の診察)視診、触診、圧診(双手診による波動・羊皮紙様感の触知)、打診
②基本的な検査法を自ら実施し、結果を解釈できる- バイタルサイン(血圧、脈拍数、呼吸数)
- 血液・尿検査
- 画像検査:オルソパントモグラム、デンタル、オクルーザル、断層 X-P、顔面単純 X-P、CT、MRI、頚部超音波検査唾液腺造影検査
- 歯髄電気刺激
- 口腔内組織採取(生検)、FNA(Fine Needle Aspiration)
- 探針による齲触歯の検査
- 歯牙動揺度、盲嚢測定
- 口腔内局所浸潤麻酔
- 伝達麻酔(下顎孔、眼窩下孔、オトガイ孔)
- 窩洞形成、充填、印象・咬合採得、修復処置
- 抜髄・感染根管処置
- 歯周治療(スケーリング、歯周外科など)
- 抜歯(乳歯・簡単な永久歯抜歯、困難な永久歯抜歯、埋伏歯・埋伏智歯抜歯)
- 膿瘍の穿刺、切開術
- 口腔内の生検、小腫瘍切除術
- 嚢胞摘出・歯根端切除術
- 歯牙結紮固定術
B. 経験すべき症状・病態・疾患
①症状・病態- 歯牙の齲触
- 歯牙の動揺
- 腫脹・疼痛(歯肉・口腔内・顔面・顎下・頚部)
- 発熱
- 知覚麻痺
- 開口障害
- 咀嚼・嚥下障害
- 顎関節雑音・疼痛
- 出血(歯肉、口腔内)
歯原性疾患
- 齲触歯牙
- 炎症性疾患(根尖性歯周炎、歯周組織炎、顎骨骨膜炎、顎骨骨髄炎、顔面・頚部蜂窩識炎など)
- 嚢胞性疾患(歯根嚢胞、濾胞性歯牙嚢胞、粘液嚢胞など)
- 歯原性腫瘍(歯牙腫、エナメル上皮腫など)
- 外傷(歯牙破折・脱臼)
- 埋伏歯、埋伏智歯など歯の位置異常
- 顎関節症
- 顎変形症(下顎前突症、上顎前突症、開咬症など)
- 歯槽骨骨折、顎骨骨折などの顔面外傷
- 口腔粘膜疾患
- 唾液腺疾患(ガマ腫、唾石症など)
- 口腔良性腫瘍
- 口腔悪性腫瘍(歯肉癌、舌癌など)
- 唇顎口蓋裂
C. 特定の医療現場の経験
- 救命救急センターにおける顎・顔面外傷の治療
- 口腔悪性腫瘍手術後の管理・指導
- 放射線科、耳鼻咽喉科、形成外科、麻酔科など関連医科での研修